2011年5月7日土曜日

人のために役立つこととは(霊的知識の教科書:11)

皆様の世界では『利己主義を捨て、利他の精神で人のために役立つことをしなさい』などの言葉をよく耳にするのですが、これらの言葉が意味しているところを本当にご存知なのでしょうか?
そもそもこの『利己主義』なる言葉ですが、読んで字の如く、己の利のために尽くす事を意味しているのですが、これは果たして本当に捨てなくてはならない概念なのでしょうか?
皆様は、それらの言葉の意味について本当に確信を得るほどの経験を積み、確かに理解していると自信を持っていえるのでしょうか?
字面を追っただけで知った気になっているのではないのでしょうか?
『己』を捨てるということは、ロボットと同じになるということなのではないのでしょか?
今の皆様に大切なのは、通信や経典に書かれている内容をそのまま実践する事ではなく、そこに書かれている意味についてご自身なりの考えを導き出す作業であると思われます。
『〜すべきだから成す』とか、『善行と言われているから』などとご自身に課しているうちは、まだ確信するほどの理解を得ているとは言えず、ただ伝え聞いたり読んでみたなど、一応知っているといった程度のものなのです。
それでは真理の確信にはまだ辿り着いているとは言えず、それこそただの自己満足に過ぎないのではないのでしょうか?

人は皆、霊的な成長に伴って求める対象が変化してゆくものです。
最初は、己のためだけに欲求を満たし、周りの方々に大きな被害をもたらすかもしれませんが、それらの欲求はいくら満たしてもすぐに飢え乾いてしまうのです。
そうなると、今までは満足できていたものでは『足りない』と感じるようになり、新たなものを求め始めます。
その様な活動を繰り返すうちに、『己』の枠組みの中に『愛する人』が含まれるようになります。
そして、今度は『愛する人』と共に喜べるようなものを欲するようになります。
最初は『愛する人』が、恋人や配偶者など一人だけかもしれませんが、いずれ子供が産まれると二人に増えます。
その後、『愛する人』の枠はどんどん広がり、家族だけで喜びを分かち合っていたのがやがて、友人もそこに含まれるようになり、近所の人たち、同じ街に暮らす人たちと、どんどん広がり続け、やがては世界へと広がってゆくのです。
このように、自然に『己』と同じ枠組みの中で考えられる人の数が増えることで、周りの人たちの身に起きている事がまるで自身のことのように感じられ、その結果として行動せずにはいられなくなるのです。
これが『人のために役立つ』という言葉が本当に意味しているところであり、「そうしたい」と心から求めてしまう行動が、結果として周りの人の役に立っているということなのです。
自身に課したものでもなければ、誰かの言いなりになったわけでもなく、思うがままに行動した結果なのです。
決して『己』を捨てたのではなく、『己』の枠組みが広がっただけなのです。
これが、本当の意味で真理を確信した結果といえるのです。
『己』を強く意識することは自我を強く保つ事に繋がるのですが、これはとても大切な事なのです。
自我を強く保てないというのは無知の現れであり、無知が恐れを抱かせ、過剰な自己防衛のために周りの方を傷つけてしまうという場合がよく見受けられます。
皆様の言う『利己』の延長上に『利他』があることをよく覚えておきましょう。

『利己と利他』という表現はあまり適切ではないのですが、過去の通信においては皆様に分かり易くご説明しようの意図から、これらの言葉を使ったのでしょう。
ですが、かえってこれらの表現が誤解を生む結果になってしまいましたので、今、この場で改めてご説明させていただいているのです。
『利己主義を捨て、利他の精神で人のために役立つことをしなさい』とは、『霊的に成長して真理を確信すると、自然にこのような行動をとるようになりますよ』という意味であり、目標として伝えられたのであって、理解できないのに『成しなさい』という意味ではございませんので、間違えないように注意していただきたいと思います。
あくまでも、『そこを目指して霊的成長に共に励みましょう』という、激励のようなメッセージであるとご理解下さい。
霊界通信の複雑さにより、こちらの意図が中々完璧に皆様の元に伝わることはございませんし、皆様ご自身の理解の程度や、私ども自身の知識の限界といった様々な要因も重なっているなど、上手い具合に表現する事は難しいので、場合によっては勘違いするような表現が使われていることもありうるのです。
それはこの通信に限らず、過去の通信や聖書、経典などにも言えますので注意しましょう。
文章が古ければ古い程、途中で皆様の解釈が入り混じって伝わっていたり、書き換えられたりしている危険性が高まるので、特に注意が必要です。
だからこそ、ご自身の経験に基づいた知識や知恵を総動員して考える癖を身につけ、ご自身なりの答えを導き出す努力を怠らないようにしましょう。
その為にも、好奇心を持ち続けるのは大切な事ですし、向上する意欲も重要といえるでしょう。
皆様にお願いしたいのですが、鵜呑みにして言いなりに動くのではなく、ご自身が心から欲するところを成し、その結果を謙虚に受け止める努力をしていただきたいと思います。
それが無知からの唯一の脱却法であり、なおかつ一層の霊的成長へと繋がってゆくのです。

(2008年3月20日)

0 件のコメント:

コメントを投稿